15杯目!「カンパリ・シェカラート」〜1つの材料をシェークするだけで完成するイタリアの味〜

カンパリシェカラート カクテル

カンパリ1本だけでカクテルになる。
そんなトンチみたいな話ですが、これが立派に成立してしまうのが、カンパリシェカラート(カンパリシェケラートとも)のおもしろいところです。


カンパリってどんなお酒?

カンパリはイタリア生まれのビターリキュール。
数十種類ものハーブやボタニカルを使った、複雑な味わいを持つ赤いお酒です。
独特の苦みと甘みのバランスが特徴で、カンパリソーダやネグローニの材料としても有名ですね。


「シェカラート」って何?

シェカラート(シェケラートとも)は英語の「シェーク」にイタリア語の語尾をつけた言葉で、意味は「シェークした」です。
エスプレッソを氷と砂糖でシェークする「カフェ・シェカラート」というドリンクがイタリアにはあって、その発想をカンパリに応用したのがこのカクテルです。

イタリアには日本のような「グラスに氷をたっぷり入れたアイスコーヒー」はほとんどないと言われています。
せっかく濃く抽出した、イタリア人の魂とも言えるエスプレッソを薄めることを好まない。でも夏は暑いから冷たいものは飲みたい。
その解決策がシェークで急冷するカフェ・シェカラートだった、というわけです。

エスプレッソをシェークすることでふわふわでクリーミーな泡が生まれ、滑らかな食感がエスプレッソの苦みをおだやかに感じさせます。

このシェカラートの発想が、そのままカンパリにも応用されてうまれたのがカンパリ・シェカラートです。
なんか、イタリアらしいですよね。


なぜ1つの材料をシェークするだけでカクテルになるのか

材料はカンパリのみ、なのにカクテルと呼べる理由があります。
カンパリ自体がすでに数十種類の素材から成る複雑な液体で、ある意味「ボトルの中にカクテルが完成している」とも言えます。
そこにシェークすることで「氷(加水と冷却)」と「空気(エアレーション)」が加わる。
さらに、カンパリに含まれるハーブやボタニカルの精油分が空気と混ざり合うことで、エスプレッソと同じようにクリーミーな泡を生み出します。
シェーク前の深い赤色の液体は、空気を含むことでオレンジがかった明るいトーンに変化し、表面にはふんわりとした白い泡が浮かびます。
そして苦みが穏やかになり、口当たりがなめらかになる。同じカンパリとは思えないほど、印象がやわらかくなるんです。
これらすべてが合わさって、全く別の飲み物へと変わっていくんです。


ミラノで生まれた、食前の一杯

このカクテルはミラノの「アペリティーボ文化」と切り離せません。
アペリティーボとは夕食前に楽しむ食前酒の習慣のこと。仕事終わりにバールで食前酒を一杯ひっかけてから食卓やレストランに場所を移し、食事にはワインを合わせて楽しむ。そんな流れがイタリアでは日常に根付いています。
なかなかの酒好き文化ですよね。

カンパリの創業者一族が1915年にミラノにオープンしたバール「カンパリーノ」。
このお店でシェカラートのスタイルが確立していき、1960年代頃には人気となって広まって、今ではミラノのアペリティーボを象徴する一杯として知られるようになったと言われています。


つくり方

本場カンパリーノでは「リバース・ドライシェーク」と呼ばれる技法が使われています。
まず氷とカンパリを一緒にシェークして冷やし、一度氷を取り除いてから再度シェークするという工程で、より安定した濃密な泡をつくるための手法です。

私がつくるときはまた別のアプローチで、BIRDY.のシェーカーを使ってつくります。
BIRDY.のシェーカーにカンパリ60mlとアンゴスチュラビターズ1dashを入れ、よく締まった氷をたっぷり入れます。
シェーカーを閉める前に中にオレンジピールを吹きかけ、それから蓋をしてシェークします。
シェークは氷を砕きすぎないよう、氷を回すようなハードシェークで100発ほど、通常のカクテルの5倍くらい振ります。
オレンジピールの香りを閉じ込めた気泡をカクテルの中に練り込んでいくイメージで。
シェーカーの表面が真っ白に霜が張り、もう持っていられないくらいキンキンに冷えたら、そのままカクテルグラスへ。


アンゴスチュラビターズ??

冒頭で「カンパリ1つでカクテルになる」と書いておきながら、ビターズが入っているじゃないかというツッコミはごもっとも。
すいません。
実は最近カンパリのボトルデザインがリニューアルされてから、苦みが控えめになったように感じます。
世界中のバーテンダーやカクテル愛好家の間でも「甘くなった」という声が多く上がっていて、どうやら私だけの感覚ではないようです。
以前新旧並べて飲み比べてみましたが、どう考えても同じ味とは言えません。
個人的にはシロップっぽい甘さが前に出すぎて、カンパリ=苦いと言われるようなあのビター感が薄れてしまった印象。
なぜ変えてしまったのか不思議でしょうがないんですが、その分の苦みをアンゴスチュラビターズとオレンジピールの油分で少し補っています。


このつくり方とBIRDY.の話

この100回振るつくり方はBIRDY.のシェーカーに出会ってから辿り着きました。
BIRDY.は内側をかなり精密に研磨されており、きめ細かいマイクロバブルが込めやすい構造になっています。
また、滑らかな研磨と丸い形状のため氷へのダメージが少ないためか、氷が溶けるスピードが遅く水っぽくなりにくいと体感しています。
そのため、100回振っても過度に加水されることがなく、他のシェーカーでは到達できないような低い温度まで冷やすことができます。
表面に霜が真っ白に張るくらいまで冷えます。
仕上がりを見ても水っぽくなく、氷片も多すぎず、ふわふわなカンパリ・シェカラートができあがります。

凍傷にはくれぐれも注意してください。


味わい

シェークすることで、きめ細かい泡をたっぷり含んだシルキーな口当たりに変わります。
トロみのある滑らかな食感で、角のない喉越し。
シェーク前に吹き入れたオレンジピールの香りがほのかに感じられ、カクテル全体に爽やかなアクセントを添えてくれます。
カンパリをストレートで飲むと喉の奥に渋い苦みが居座り続けますが、シェークすることでその収斂味がなくなり、甘さと苦みがやさしく一体になります。
嫌味のない余韻が爽やかで、スッと飲み干せてしまいます。


日本ではシメの一杯にも

本場イタリアでは食前酒として飲まれるカンパリですが、うちのバーで出していると日本のお客さんはシメの一杯として注文する方がほとんど。
たくさん飲んだ夜の最後に、ハーブのお酒で胃をリフレッシュして帰る。
カンパリを使ったお酒は昔から酔い覚ましみたいな使われ方をすることがよくあります。
アルコールを追加摂取しているので理屈としては完全に間違っているんですが、それでも「なんとなく整う気がする」という感覚、わかる人にはわかるはず。
食前酒で食欲を整えるイタリア人も、深酒のシメに胃腸を整える日本人も、食前とシメとでタイミングこそ違いますが、結局どの国の呑み助もお酒を飲む理由を見つけるのだけはうまいですよね。



使用シェーカーについて

BIRDY.は愛知県豊田市の自動車部品メーカーによる金型用研磨技術を応用して開発された、国産のバーツールブランドです。
シェーカー内側は熟練の職人が10工程をかけて0.2ミクロン以内まで精密に研磨されており、絶妙に残された表面の微細な凹凸がきめ細かい泡を持続させます。
さらに縦方向の研磨が液体の流速を上げ、マイクロバブルが込めやすい構造になっています。
内側の球体に近いフォルムは氷や素材への余計なストレスを軽減し、氷が溶けにくく加水をコントロールしやすい。
最初使った時は全然加水されないので戸惑ったのを覚えています。
今では、カンパリ・シェカラートとサイドカーやクリーム系をつくる時は必ずこのシェーカーを使います。
シェーカーにこだわりたい方には、ぜひ一度手に取ってみてほしい一本です。

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