9杯目!「ペリオディスタ」〜記者たちを惹きつけてやまない、フルーティーなダイキリ〜

ペリオディスタ ダイキリ カクテル

ペリオディスタ(Periodista)

  • ダークラム 30ml
  • アプリコットリキュール 7.5ml
  • コアントロー 7.5ml
  • ライムジュース 15ml
  • 手法 シェーク
  • グラス カクテルグラス

ペリオディスタとはスペイン語で「記者・ジャーナリスト」を意味するカクテルです。

ダイキリにアプリコットとオレンジのリキュールを加えた、ダイキリの親戚のような一杯で、「ペリオディスタ・ダイキリ」と呼ばれることもあります。

ただ、このペリオディスタの由来を調べていくと、一筋縄ではいかない厄介な背景が見えてきました。

ペリオディスタの味わい

ダークラムで作ると、フルーティーでコクのある甘みが広がって、ラムの芳醇な香り全開。

ラムとアプリコットの相性がとても良く、オレンジリキュールのコアントローと相まっていかにも南国っぽい陽気な味わいの一杯です。

マイヤーズで作ると少し荒々しいワイルドな感じになるので、より飲みやすく仕上げたい場合は、穏やかなダークラムにしたほうが人を選ばないですね。

ペリオディスタの発祥

ペリオディスタの発祥はキューバのハバナと言われていて、「ジャーナリスト」というカクテル名がついた経緯にも、いくつかの説が並んでいます。

ハバナの有名店エル・フロリディータにヘミングウェイが通っていたことから、彼にちなんで名付けられたという話がよく語られます。

一方で、1962年のキューバ危機の際にハバナのバーに集まっていた外国人記者たちの間で人気を博し、広まったから、という説もあります。

さらに別の説では、1980年代に活躍したキューバのジャーナリスト、エクトール・スンバドにちなんで名付けられたとも言われています。

ただ、後ほど触れますが、このカクテルのレシピは1948年にはすでに文献に記録されているので、年代順に見ればヘミングウェイ説が一番時系列に合っていて、キューバ危機説やスンバド説はどうも辻褄が合いません。

誰が名付けたにせよ、いろんな時代の「記者」がこのカクテルに自分の名前を結びつけたがる、不思議な引力を持った一杯のようです。

ボストンで復活

ペリオディスタはキューバ革命後、ハバナのバーシーンから一度ほとんど姿を消したカクテルです。

それが1994〜1995年ごろ、アメリカ・ボストンのレストラン「シェ・アンリ」のバーテンダーがこの古いカクテルを見つけ、「ヘミングウェイのお気に入り」としてメニューに掲載したことで再び動き始めました。

元々のレシピはホワイトラムをベースにしたものでしたが、マイヤーズダークを使った方が美味しいという判断から、ベースはダークラムへと変更されていきました。

その後、ボストンで修行した多くのバーテンダーたちの間で「ボストンの定番」として受け継がれ、街全体に広がっていったそうです。

その結果、ボストンを一歩出ればバーテンダーですら知らないのに、ボストンでは誰もが知っている、という特異な存在になりました。

もう一人の記者

実は、このカクテルにはもう一人の「熱心な記者」が登場します。

作家・映像作家のデヴィン・ハーンです。

2007年、ケンブリッジのレストラン「シェ・アンリ」でペリオディスタに出会ったハーンは、その味とメニューに書かれた逸話に惹かれました。

ところがボストンを一歩出ると、ニューヨークやロサンゼルスではプロのバーテンダーすら誰もこのカクテルを知らないことに首をかしげます。

同じ逸話は、ボストンの名店イースタン・スタンダードのメニューにも「キューバ発祥で、ヘミングウェイのお気に入りだった」という形で載っていました。

これに疑問を持ったハーンは、このカクテルの正体を確かめる「壮大な探求」に乗り出します。

この調査の様子は、ハーン自身のブログ「ペリオディスタ・テイルズ」に全23章にわたって綴られています。

ペリオディスタ・テイルズ

調査は約1年にわたり、ボストン、ニューヨーク、ニューオーリンズを舞台にした長旅になりました。

世界的なカクテル史家への取材、ボストンのスターバーテンダーたちへの聞き込み、ニューヨーク公共図書館でのアーカイブ調査、コレクターが所有する1930年版のキューバ・バーテンダー協会マニュアルの確認など、地道な作業の積み重ねです。

そうして地道な調査を重ねたハーンがようやく辿り着いたのが、1948年にハバナのバーテンダー協会が発行したマニュアル『El Arte del Cantinero』で、ここに掲載されているレシピが最古の記録でした。

これでようやく、ペリオディスタがキューバ発祥であることが確信できたのだそうです。

1930年版の同マニュアルには記載がないため、その間のどこかで生まれたのではないかと推測されています。

ただ、誰が考案したのか、どのバーで生まれたのかは特定されていません。

そして肝心のヘミングウェイ伝説については、彼が実際にこのカクテルを好んでいたという確かな証拠はどこにも見つかりませんでした。

この調査結果を受けて、イースタン・スタンダードは裏付けの取れない「ヘミングウェイのお気に入り」という説明をメニューから外しました。

そしてハーンの熱心な調査に敬意を表し、メニューの説明文に「不屈の記者のためのラム(rum for the intrepid reporter)」「ある街のオマージュ(one city’s homage)」「ある男の探求(one man’s quest)」という言葉を添えて、彼の活動そのものを称えることにしたそうです。

この文を見たハーンは、「あごがしばらくの間、ガクガクと上下に揺れ動いた」とブログに記しており、その衝撃を抑えるためにカクテルを口に流し込まなければならなかったほどだったと語っています。

そして、自分自身がいつの間にか、このカクテルの物語を守る記者になっていたと振り返っています。

カクテル一杯の正体を確かめるために1年もかけるというのも、なかなかの執念だと思いますが、「記者」を意味するこの一杯には、人を本物の記者にしてしまうほどの魅力があるのかもしれません。

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