36杯目!「サイドカー」〜いつ誰がつくっても、美味しいように〜

カクテル

ブランデー30:コアントロー15:レモン15。
サイドカーは、この比率が定番として知られるカクテルです。
でもこの比率通りにつくって、美味しいと思えたことなんて一度もありません。


レシピ・基本情報

サイドカー(Sidecar)

  • ヘネシー VS33ml
  • コアントロー10ml
  • グランマニエ7ml
  • レモンジュース10ml

シェークして茶漉しでカクテルグラス
オレンジピールで香り付け


サイドカーは1922年、ロンドンとパリでほぼ同時に文献へ登場したカクテルです。
サイドカー付きのバイクが事故に合うと、運転手よりもサイドカー側に乗る女性の方が命を落としやすかったことから、いわゆるレディキラーカクテル、「女性を口説くための一杯」の名前になった、なんて言われたりしますが、発祥地も考案者も諸説あって、はっきりしたことは分かっていません。

ブラウンスピリッツとレモンの相性は紙一重

サイドカーは、お店で働いていると、同業の方やバーホッパーからオーダーされることが圧倒的に多いカクテルです。
難しいデリケートなカクテルだからこそ、ここのバーテンダーはどうやってつくるんだろう、と興味が湧く一杯です。

樽熟成させたブラウンスピリッツには、樽から来るタンニンなどのポリフェノールの渋みやえぐみがあります。
そこに下手にレモンやライムの酸味を合わせると、お互いの嫌な部分を強調しあってとても気持ち悪い味になります。

ラムやカルバドスなら、そこまで気を遣いません。
お酒自体に甘さやフルーティーさがあるので、レモンやライムと合わせてそう酷いことになることはありません。

問題はブランデーとウイスキーです。

日本のカクテルブックを開くと、サイドカーはたいてい

「ブランデー30ml・コアントロー15ml・レモンジュース15ml」

の分量で紹介されています。
この分量でつくるサイドカー、上で紹介したとても気持ちの悪い味そのまんまです。控えめに言ってもちょっと吐瀉物のような味がします。
なんで長年この分量のまま紹介され続けているのか不思議で仕方ありません。

しかし分量を調節してコクを出し、酸味が悪さをしないようにうまく合わせるとこれが絶妙に美味しくなります。

僕の知る限り、この分量のままつくっているバーテンダーを見たことがありません。
たいていの方はブランデーを35〜40mlくらいまで増やし、レモンは10ml前後まで減らします。
隠し味にグランマニエを1tsp加える方も多いです。

中にはごくごく稀に「ブランデーの香りを活かすために、冷やしすぎない」とか言う人もいます。
シェークしておいて冷やさない、という謎理論です。
正直それならスローイングやドライシェーク(氷を入れずにシェークする技法)の方が良いのでは?と思っちゃいます。

本に印刷された分量は参考程度のもので、みんなそれぞれ自分なりのこだわりを持っているカクテルです。

いつ誰がつくっても、同じ美味しさに

僕が普段つくるサイドカーのレシピはこちらです。

  • ヘネシー VS33ml
  • コアントロー10ml
  • グランマニエ7ml
  • レモンジュース10ml

「シェークするのに冷やさない」という謎理論は放っておいて、お酒は3つとも冷凍庫でしっかり冷やしたものを使います。
シェークする前から液体は氷点下。
さらに、加水量が抑えられるBIRDY.を使います(BIRDY.については15杯目!カンパリ・シェカラートで紹介してます)。

そして、注ぐときには茶漉しを使って氷片を取り除きます。
氷片は通常のカクテルには程よく入っていた方が清涼感があって良いですが、サイドカーの持ち味のコクや気泡のテクスチャーには邪魔になってしまいます。

加水されにくく、氷片も取り除けるため、水っぽくなることを心配せずに長めのハードシェークをします。
茶漉しを通すときにとろみを感じるくらいしっかりと気泡を含ませます。

最後にオレンジピールで香り付け。
“シェークしてしっかり冷やした”カクテルの香りはオレンジピールに丸投げします。

コアントローよりもふくよかな味のオレンジリキュールのグランマニエをしっかり目に足して、コクのある味になっています。

レモンジュースがもう何ミリか多くても美味しいとは思いますが、前述した気持ちの悪い味と紙一重になります。
僕以外の後輩がつくることもあります。
ギリギリを攻めて失敗の可能性を抱えるよりも、一定以上のプロのシェークさえあれば誰がつくっても美味しいレシピを用意しておくのがプロの責任だと考えて、この配合に落ち着きました。


家では、なかなか難しい一杯

誰がつくっても美味しいレシピ、と言った直後になんですがサイドカーを家でつくるのはなかなか難しいです。
お酒を3本も冷凍しておいて、フレッシュのレモン、オレンジピール、状態の良い氷まで揃える。
たった60mlの一杯をつくるのに、包丁、まな板、スクイーザー、メジャーカップ、バースプーン、シェーカー、グラス、茶漉しと、これだけの道具も使います。
シェークの技量の差も、どのカクテルより出やすい一杯です。

だからサイドカーは、バーで楽しむのが一番です。
そのバーテンダーがどんなこだわりを持っているのか、それを知るきっかけになれば嬉しいです。



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材料はカンパリだけ。氷と空気を含ませてシェークすると、苦みが和らぎ、クリーミーな泡をまとった全く別の飲み物に変わります。ミラノのバール「カンパリーノ」で確立し、アペリティーボを象徴する一杯となりました。

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